海って、サーファーという愛すべき生き物を抱き、守る気高い女神みたい。波乗りは、彼女と仲良くさえできれば最高に楽しめそう。 サーフボードの二人乗りなんて初めて見た。真っ逆さまにワイプアウトするのも。波がつくった影も。波ってあんなに大きく変身するんだ…。スクリーンで観る波は、東映の映画のオープニングの荒波しか見たことなかったよ。映画を見始めた数分間、あたしはたぶん、珍しい光景の連続で、口をぽかーんと開けていたんだろう、喉が乾いてくるのに気づいて、つばを飲んで、慌てて口をつむった。 この映画が作られた76年、小学生だった。夏休み、平泳ぎの課外レッスンで25mプールにいたとき、または瀬戸内海で潮干狩りをしていたとき、どこかの海では彼らがサーフィンをしてたんだと思うと、羨望だけじゃなくジェラシーすら感じちゃう。 あたしのお気に入りのデーンは、女神様のめがねにかなった、選ばれし野生児。波乗りが好きで好きでたまらなくて、サーフボードも彼の体の一部みたい。海での彼は草原を駆け回る子犬みたいに無邪気で、鵠沼のデニーズって世界一おいしいデニーズなんだよ、って言ったら、ゼッタイ、うんそうだって(こっちも向かず=食事に忙しくて)言ってくれそう。最高だな、デーン。海から上がって、ぶるんと髪から水しぶきを飛ばす様子、あたしもあんな風に海と仲良くなりたいよーって地団駄踏んじゃった。とりあえず、真似できそうな”髪ぶるん”から始めようっと。 いろんな場面で、観客から歓声が上がったのも楽しかった。映画は映画館で観るのが好きだけど、こんな雰囲気、初めて!初心者も先輩方も、みーんな波乗りが好きっていう共通項で結ばれてる感じ。 3回しか海に行ってないヒヨコの私にですら「忘れられない瞬間」はすでに数えきれないくらいある。サーフボードに立って乗ったときの、飛び跳ねたいような高揚感(飛び跳ねたらワイプアウト♪)。波にもまれながらも、顔、笑ってるよ(水飲んじゃうよ…)っていう瞬間。エイシロウマンと波待ち中に、マドンナのマッチョ加減について語り合った時間(波乗りと無関係!)…etc。 映画の中で、しあわせそうに、時に死と隣り合わせで波に挑むサーファーたちを見てると、いろんな気持ちが、ないまぜになる。わくわくして、憧れて憧れて、今、そうじゃない自分がじれったくて、今すぐにでも海に飛んで行きたくなって、映画が終わる頃には、すっかり海から上がったかのように心地よく気怠くなってた。小学生のときから、つい先日レッスンを受け始めるまでの人生を棒にふっちゃったかもぐらい思わせるんだもの、罪だわサーフィンって。1回、岩に叩き付けられるしか冷静になる術はないのかな…。 ただ一度のモーメントが、人生の最優先事項になりつつある私はこの映画に発破をかけられた。海に行きたい。今、真夜中。 ※エイシロウマン…吉田プロの後輩で、私に指導をしてくださったことがあるナイスガイ。 (2003年5月23日)
by surfer-lui
| 2004-07-13 12:54
| サーフィン映画
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